「正体」という簡潔なタイトルから、人間の偽善性(正体)を暴くストーリーが展開されることを勝手に期待し、映画館で鑑賞しました。
ある21歳の殺人を犯した若者(主人公)が牢屋から脱獄し、「正体」を隠しながら、警察に捕まらないように3回職業を変え、逃走するのですが、それぞれの職場で出会う同僚に対して、毎回「殺人をする人間とは思えない紳士的な態度」で接することから、冤罪であることを徐々に仄めかしていくという構成でした。
「主人公はいいやつで殺人は冤罪だった」としてストーリーが終わる場合、何の捻りもないと思ったので、最終的な巻き返し(例えば、主人公の妄想であるとか)に期待したのですが、思った通りに物語が収束していってしまい、拍子抜けしました。
具体的なオチとしては、殺人の目撃証言者の元に直接行き、「私はやってませんよね!」と涙の説得を試み、その様子をスマホで公開ライブ配信することで、(脅迫気味に)目撃証言を撤回させ、そのライブを見ていた大衆の心を動かし、警察も誤認逮捕を認めるに至り、主人公は死刑を免れるというものです。
「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」のような、さまざまな職業の人間になり変わり人を器用に欺くエンターテイメント性もなければ、「リーガルハイ」や「エルピス」「マミー」のような、偏向報道を実施するマスコミや空気にのまれる大衆の愚かさを伝えるようなメッセージ性もなく、「利他の心(必死でパワハラ上司と掛け合いギャンブル狂の男性建設作業員に2万円をあげる/女性雑誌編集者の家にルックスを武器に転がり込み、料理を毎日作る/新人女性看護師と一緒に性欲を出さずに会話する(これは利他的行動なのか)」を持って生きていれば、人生はより良い方向にいくという危険な綺麗事を言われているようで、私の心は揺さぶられませんでした。



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